隣町珈琲さんで「古事記から探る日本人の古層」というタイトルで全5回の講座をします。

第一回目は2月28日(水)です。※でも、もう満席のようですが。

全5回がどんな流れになるかは、いつものように見えないところもあるのですが、こんなところから話しはじめて、こんなことをお話ししたいということを書いておきますね。

●まずは用字法から
最初にお話したいのは、「ちょっと変だなぁ」と思う『古事記』の用字法についてです。

あ、「用字法なんて難しそうだからヤダ」といって引かないでくださいね。まずは、文字を疑う、それが古い時代のものを読む基本です。

文字を持たなかった古代の日本人は『古事記』のような神話(本当は神話って言い方は間違いなのですが)を口から口へと伝えて来ました。それを『古事記』という本にしようとするときに、はじめて文字にした。

「文字を知らない人」が話したことを、「文字を知っている人」が文字にした。

まあ、当たり前ですね。「だから何?」っていう人もいるでしょう。

でも、これってアンフェアじゃないですか。

だって、「文字を知らない人」は、自分がしゃべったことを文字にされたときに、そのチェックができないんですよ。もう、かわいそうで、かわいそうで、涙が出ちゃいます。

僕たちも、海外でお話をするときなどは通訳の方がついてくれるのですが、英語だとちょっとはわかるので、「え、それ違うんだけど」ということがたまにあります(たとえば節をメロディ、拍子をリズム、間をポーズなどと訳されたりするとね…)。でも、その言語自体を知らないと、それが正しいのか間違っているのかもわからない。もう全面的に信頼するしかない。

あったでしょ。偉い人の演説で、めちゃくちゃな手話をされたって話。それだってわからなければ、わからないんです。

神話を伝えていた人たちも、そうだったんじゃないかと思うのです。

今でも新聞などからインタビューをされて、それが紙面に出たときに「え、こんなこと言った覚えがない」ということがよくあります。彼らはそれすらもできなかった可能性があります。ね、アンフェアでしょ。

かりに相手が「じゃあ、書いたように読んでみるから、これで正しいかどうか聞いてね」と言ってくれたとしても問題は残ります。

まず文字はすべてを写し取ることができない(これは話していくと際限がなくなるので、これ以上踏み込みません)。

そして、これが大切なのですが、文字を知らないということは、少なくともその用字法が正しいかどうかはチェックができないのです。

●ちょっと変だぜ、『古事記』の用字法
で、『古事記』の用字法の中には「それはないだろう」というのがいくつかあります。

まず、ひとつは「黄泉(よみ)」。

「よみ」は、死者の行く国として『古事記』に登場しますが、「よもつひらさか」という言葉もある通り、本来は「ひら(平)」「さか(境)」。「平面上にある境界」という意味です(「ひら」には崖という意味もあるので、崖のようなところだったという説もあります)。

死者の国は、生者とは地続きの「なんかそこらへん」にあったのです。

しかし「黄泉」という漢字を当てはめてしまうと、それは突然、地下の冥界になってしまいます。なぜなら、「黄泉」という文字は『春秋左氏伝』という中国古典では「地下のトンネル」という意味で使われているからです。

むろん、当時の日本人のほとんどは、そんなことは知らなかったでしょう。しかし、この呪い(というのは言い過ぎです、はい)は、じわじわと日本人の中に浸み込んでいき、いつの間にか多くの日本人は死者の国は地下にあるように思ってしまっています。

これは『古事記』を文字化した太安万侶(おおのやすまろ)が、漢字の意味をよく知らなかったからとか、あるいは日本語をよく知らなかったからだ…ではなく、どうも深謀遠慮というか、なにか企みがあったんじゃないか、なんてことを妄想してしまうのです。

あ、『論語』の講座に出られた方はわかりますが、僕の話の80パーセントくらいは妄想ですので、学問的に正しいことは期待しないでくださいね。

●その他には

第一回目はそんなことをお話しますが、第二回目以降にはこんなことを話してみたいな、と思っていることを箇条書きで列挙してみますね(ただし、この順番で話すかどうかはわかりませんが、話すことも、話さないこともある可能性が大です)。

・性器の神話と機能の神話
男女を表すのに「性器」で表す神話(文字)と、「機能」で表す神話(文字)があります。古事記は性器の方。で、性器の神話では、女性の美醜があまり問題にされない。古事記では、それが問題にされるのは上巻の後半以降。前半ではむしろ男性の美醜が問題になる。美醜というのは、あるい意味、「商品化」のあらわれじゃないかと思うのです。その時代、どちらの美醜が重要だったかを考えると、男性が商品だったのか、女性が商品だったのか…が見えてくるかなぁ…なんてことを古事記とシュメール神話を読みながら考えます。

・女性の神話
上記と深く関連するのですが、古事記の中では女性の役割が非常に大きい。これもシュメール神話や、古代中国の「婦好」の甲骨文なども参考にしながら読んでいきます。

・古代の戦い
世界中の神話が、その多くの描写を「戦い」に割いています。そして、その戦いぶりを見ると、その民族の戦い方がわかります。…ということで、古事記の中から戦闘場面を抽出して「戦記文学としての古事記」を読んでいきます。

・うんちの話
日本神話の特徴のひとつにトイレとうんちの頻出があります。スカトロジーでは全然ないのですが、うんちの話とトイレの話が多い。古事記の中から「うんち」話、「トイレ」話を抽出して、なぜ日本の神話にはうんちが多いのかを考えます。

・目の欲望
古事記の前半からは「欲望」の変遷を見ることができます。そして、そのキーとなるのが「目」です。純粋な欲求が、対象を必要にしない抽象的な欲望に変容していく過程は、「おっぱい」を欲しがる赤ちゃんが「名誉」や「地位」という形のない欲望を欲し、それによって苦しむようになる過程に似て、なかなか興味深い。

・祈りの発生
「祈り」という語は古事記の中にはありません。しかし、祈りの萌芽を見ることはできます。人はなぜ祈らなければならなくなったか。それを古事記の中から探りたい。

・発酵する神話
日本の最初のころに登場する神さまに「発酵の神さま」がいるほどに、日本神話は発酵の神話です。なんといっても「ぬかどこ」を持つ民族ですから。古事記の中から「発酵」に関連するエピソードを選び出して読んでいきます(って、これはちょっと今回は時間がないかな)。

・音楽と神話
ああ、これも今回は無理そうだな。土蜘蛛族を退治する音楽をはじめ、古事記の中の音楽もとても興味深いのです。

****************
というわけで、詳しくはこちで。ご受講、お待ちしております。

https://ameblo.jp/tonarimachicafe/