能『羽衣』の物語です。
ある春の朝、三保の松原の漁師、「伯龍(はくりょう)」が浜に出ると、空からは花が降り、音楽が聞こえ、妙なる香りが四方に漂っていた。不思議に思った伯龍が松を見ると美しい衣がかかっていた。「家宝にしよう」と伯龍は、その衣を取って帰ろうとする。 |
…とそこに呼びかける美女が。「その衣は天人の羽衣。人に与えるものではない」という天女に、「それならなおさら返せない。これは国の宝にしよう」という伯龍。 |
「その衣がないと空を飛ぶこともできず、天に帰ることもできない」と嘆く天女。「なら地上に住めばいいじゃないか」という伯龍。そのやり取りの中で、天人の頭の華がしおれはじめ、天人自身も忽然と衰えていくのです。 |
その嘆きを見て、かわいそうに思った漁師は衣を返すことにするが、その代わりに「天人の舞楽」を舞ってくれと頼む。「衣がなくては舞えない」という天女に、漁師は「衣を返したら舞わずに天に帰ってしまうのではないか」と疑う。すると天女は「いや疑いは人間にあり。天に偽りなきものを」という。我が身を恥じた漁師は、衣を返す。 |
衣を身にまとった天人は、この三保の松原や富士の景色は月の都にも劣らないと謡いつつ舞い、東遊びの駿河舞を授ける。 |
そして、報恩の舞を舞ったあと、「あらゆる願いが叶い、そして国土も豊かになるように」と、七宝充満の宝を降らしつつ、月の都に昇って行った。 ※『羽衣』と『真田』が上演される8月7日(日)の「天籟(てんらい)」能の会。お待ちしております。 天籟能の会のおしらせ→http://watowa.blog.jp/archives/51460046.html |