今年はどんな歳?

さて、今年、平成22年(2010年)を干支(えと)からみると、どんな歳か。

干支でいえば今年は庚寅(かのえ・とら)の歳です。「庚」も「寅」も変化のシンボル、激しい変革の年になるかも?

▼干支による年

・・という話を始める前に、干支によって歳を考えるって?という話をしましょう。

まずは、干支の組み合わせってどいうことか、ということ。これはご存知の方も多いと思いますが、念のために・・。

十干は「10」、十二支は「12」ありますね。これをずらしながら組み合わせていくのです。

十 干:甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸
十二支:子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥

最初の10日間は上の十干と下の十二支をそのまま組み合わせればいいので簡単。

1.甲子
2.乙丑
3.丙寅

・・となります。で、こうしていくと十干は10で終わってしまうのに十二支はまだ2つ残っている(以下は上下で「甲子」のように見てください)。

甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸・○・○
子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥

そこで残ったところにもう一度、甲乙・・と入れていくのですから、こうなります。

甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸・甲・乙
子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥

・・で、こんな風にどんどんずれていく。

丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸・甲・乙・丙・丁
子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥

このようにしていくと、もう一度最初の「甲子」が出てくるのは60回目。で、今でも60歳を「還暦(暦が一度、戻ってくる)」といいます。

さて、このような干支、すなわち十干と十二支の組み合わせは「殷(いん)」の時代から使われていました。いま発掘されている考古資料だけから考えても、少なくとも3,300年以上も前から使われていた方法なのです。

ただ殷の時代には、それは「日」に対して使われていて「年」に対しては使われていませんでした。干支が年に使われるのが一般的になったのは、かなり新しく、今から2、000年くらい前です(正確な所はちゃんと調べていません。すみません)。

・・というわけで、本当のことをいうと「干支から考える今年はどんな歳?」っていうのは殷や周の人が聞いたら「???」となるのですが、それはまあ気にせず話を進めます。

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【十二支】=寅

まずは十二支の方から見ていきます。今年は「寅歳」です。虎の年です。

●千里を走る虎

虎は洋の東西を問わず「速く走る」動物の象徴です。

英語で虎を「タイガー」といいますが、これは「チグリス」という語から来ています。社会の授業で「チグリス、ユーフラテス」と習った、あれです。

チグリスというのは古代ペルシャ語で「矢」の意味。矢の飛ぶごとく疾駆する動物だから、虎は「チグリス」であり「タイガー」なのです。

東洋でも虎は千里を走るといわれ、虎退治で有名な加藤清正などは「千里一跳(ひとはね)虎之助」などとも呼ばれています。千里を一跳ですから速く走るどころではない。

さらにその疾駆するときは風を呼び、万物をなぎ倒す。そんなわけでまずひとつ。

千里を疾走する虎のように、今年は大きな、そして速い飛躍のある年でしょう!

●子を愛する虎:虎の子

大切なものを「虎の子」といいますが、これは虎がわが子をとても愛して育てることから来ています。また、チグリス(俊足)なる虎のもっとも速く走るのが、子を奪われたときだともいいます。

子を守るのは動物の本能だといいます。が、子を虐待する親も増えています。こういう現象を見て「人の本能が崩壊してきている」と歎く人もいます。

そんなことはないと思います。

人は人間になった瞬間に、あらゆる本能が弱くなった。それは「学習」の成果を高めるためです。孔子が「人は教育による違いはあるが、生まれつきによる違いはない」と言ったように、人間は学習によってどんな人間にもなり得るのです(とペスタロッチも言いましたが、むろんそれは言い過ぎです)。

となると、いわゆる本能的なことが弱い人というのは「学習能力」が高い人だということになります。

子どもを虐待してしまう人。群れが苦手な人。自分の生活のために外に出て行くのがイヤな人・・・。という人は非常に進化した人たちなのかも知れません。

で、そういう人こそ、正しい学習、特に子どもの頃の学習がとても大きな成果を発揮するのです。

たとえば子どもの頃にDVを受けたり、日常的に目撃したりすれば、学習能力が高いのだから自分もDVをするようになるし、受けやすくなる。「いい大学に行けば、将来が【楽】になるよ」と教育されれば【楽】であることが一番いいと学習するから、いい大学を出た後は家で引きこもる。

ある意味、当たり前の話。

が、学習能力が高いわけですから、本当にちゃんとした学習が再びなされれば、うまい具合に社会適応(どころか、もっとすごくなること)が可能なんじゃないかと思います。それには孔子のいう「礼」を研究することがいいヒントになるんじゃないかな、と思い、今年はマジメにそれを考えてみようと思っています。

あれ、いつの間にか自分の抱負になっている。

●強気をくじき、弱きを助ける

虎はとても強いので、アニメなどでは邪悪なものとして扱われたりもします。

東映のアニメに「わんわん忠臣蔵」というのがありました。虎は仇役です。役名は「キラー」、殺し屋。むろん「吉良上野介」の「吉良〜」です。ちなみに主人公の犬の名前は「ロック」。ロック=大石。大石蔵之助です。

が、昔の人は虎に正義を見ました。

虎は小児を襲わないといわれています(本当かどうかはともかく)。虎が襲うのは自分より強いもの。柔弱な小児に対しては優しい愛情を注ぎます。また、虎は自分に敵意を持たない者も襲いません。まさに「強気をくじき、弱きを助ける」、そんな正義の味方のような動物が虎なのです。

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【十干】=庚(かのえ)

十干の庚を「かのえ」と読むのは、十干を2つずつのペアで「木・火・土・金・水」の五行に当てはめて、各々「兄(え)」、「弟(と)」に配します。

甲=木(き)の兄(え)
乙=木(き)の弟(と)

丙=火(ひ)の兄(え)
丁=火(ひ)の弟(と)

戊=土(つち)の兄(え)
己=土(つち)の弟(と)

庚=金(か)の兄(え)←これ!
辛=金(か)の弟(と)

壬=水(みず)の兄(え)
癸=水(みず)の弟(と)

●収穫の年

「庚(かのえ)」という漢字の意味について古代の辞書である『説文(せつもん)』には「秋時、万物庚庚として、実(みの)るあるに象(かたど)るなり」とあります。秋に万物が実るのが「庚」の年、そしてそれを収穫・脱穀するのも「庚」の年です。

実りと収穫です。

去年までこつこつと努力をしてきた方、成果が出なくても地道に培ってきた方は、それらのことが実り、収穫することができる年になるかも。

●激しい改革の年

「庚(かのえ)」は「金(か)の兄(え)」で、季節でいえば秋です。しかも、激しく変化する秋、それが「庚」の年です。

「庚(コウ)」は「更(コウ)」でもあります。「更」とは「更改」、改めること、改まることです。

改まるといっても、「更改」とは全く新しいものに変わることではありません。現状の上に何かが重なって「改新」することであり、あるいはそれ以前のものと、また「交代」することです。

去年までの自分に何かが重なって、新たな自分が生まれる、そんな可能性がみえるのが「庚」の年です。

●大人は虎変する

虎は四神でいえば白虎。白は「白秋」という語があるように、やはり「秋」です。虎は秋の動物なのです。「庚」も秋でした。

秋とは変化の象徴です。

今年は十干も秋、十二支も秋、まさに大きな変化がありそうな予感がします。

『易経』の変革の卦である「革」には「大人は虎変す」という言葉が見えます(そのすぐ近くには有名な「君子は豹変す」があります)。

虎は秋には、その毛皮が美しく変化する。虎は最も威のある動物。人であれば「大人」です。あたかも虎の文様が、変化の秋の到来とともに色を変じて輝くように、大人はおのれ自身を一新して、輝かします。

それが「大人は虎変す」です。

なんか激動の年になりそうな予感が・・・。