寺子屋の構成

●日本の知識人

昨日は舞台のあと、多田富雄先生のお宅にお邪魔しました。

いろいろなお話の中で「今度、寺子屋をします」と申し上げたら、「僕も行きたい」とおっしゃって下さいました。多田先生は免疫学の世界的な権威ですが、漢文にも能にも造詣が深いのです。

孔子は「君子は器ならず」と言いました。今風な言い方をすれば「スペシャリストではなく、ジェネラリストになれ」ということですが(って、本当はそんな軽い意味ではありませんが)、多田先生のように理系で世界的な権威でありながら、しかも文系のことにも造詣が深いという方は近頃とんと少なくなりました。

いや、ほとんどゼロになりつつあるかも知れません。漢文や古典は日本の文化の基盤です。その基盤の上に西洋的なものを築き上げるからこそ意味があると思うのですが、とても残念です。

日本で最初のノーベル賞受賞者である物理学の湯川秀樹氏は漢文に非常に造詣が深く、中間子の理論は『荘子』から想を得たとも言われています。戦後に活躍した日本の甲骨学の権威の多くは湯川秀樹氏のご兄弟の貝塚茂樹先生に習っていますし、やはりご兄弟の小川環樹先生も中国文学の権威です。

ことさら日本文化といわなくても日本文化が遍在していた環境もなくなり、そして思想としての個人の文化基盤もなくなる。日本から本当の意味での知識人がいなくなりつつありますね。

みなさん、漢文、古文を読みましょう。

●寺子屋の流れ

さて、来週から寺子屋が始まります。現時点で参加を希望されている方は、大人と子どもを合わせて40人くらいになりました。そろそろいっぱいです。

第一回寺子屋の全体の流れが見えてきましたのでお知らせします。

「寺子屋」というくらいですからお寺でします。

東京の広尾にある臨済宗のお寺、「東江寺(とうこうじ)」さんです。臨済宗のお寺です。禅宗のお寺でするんだから、やっぱり坐禅と読経はしたいと思い、ご住職である飯田義道師にご相談申し上げたところ、それも実現することになりました。

今回は結跏趺坐ではなく正座で座ろうと思っていますので、ご住職から「では、静座ですね」と言われました。

ブログでも連載している鳩翁先生も、「儒」・「仏」・「道」のすべてを取り入れることが大事だと仰ってます。儒教の方でも「静座」という座る習慣があり、これが、これまた連載している「心の生まれた日」とも深い関連があります。これに関しては寺子屋でお話しますし、また第一回目の寺子屋が終わったらブログにも書きます。

そんなわけで全体の流れとして考えているのは次のような感じです。

<前半>
・静座 約10分
・読経 「般若心経」「延命十句観音経」
・小謡(能や狂言の謡の一節を大きな声で謡います)
・素読 『論語』より
・『論語』の話
・漢字の話
・静座 約10分

<後半>
ここで「大人クラス」と「子どもクラス」に分かれます。ただし、子どもも大人クラスに入っていいし、逆も可。

[子どもクラス]からだクラス
「学(學)」とは、からだを使った学びをいいます。子どもクラスはからだをいっぱい使おうということで、からだを使うさまざまなこと、特に古典芸能やダンスをします。今回は狂言の発声や舞の基本です。

[大人クラス]
連載している「心の生まれた日」など、『論語』などに関して、さまざまな話をします。

★これですると当初の1時間半では終わりそうにないので、2時間になってしまうかも知れません。