昨日のブログでは、本当はこちらを書くつもりだったのですが、続々入ってくるチベット暴動のニュースと、その反応の衝撃があまりに大きくて、思わず政治的な話になってしまいました。

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さて、土曜日は講演を頼まれて箱根まで行ってきました。聴いてくださった方は250名ほどで時間は1時間半。

講演とかワークショップとか授業とかは大好きです。ほとんど嗜癖と言っていいほど好きで、文章を書くよりはずっと(×8くらい)好きです。だから朝日カルチャーセンターとか学校の授業とか、あるいは今回のような講演とかは、終わるととても元気になります。

・・が、肉体的にはとっても疲れるので、帰ってからはバタンキューと眠ってしまいます。スポーツをした後の疲労感に似ています。その夜に原稿とかブログとかは全くできません。やるとしたら家に帰る前にどこかのカフェに寄ってやっていきます。

これは1時間半の講演でも、あるいは8時間でも同じくらいに疲れます。不思議です。

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でも、たまに講演で困るときがあります。

それは依頼してくださった方から、「どんな内容にするのか事前にちゃんと教えてほしい」とか、学校などでは「授業案を出してください」なんていわれたときです。まあ、気持ちとしてはわかるのですが、これは本当に困ってしまいます。

最初のころは真面目にそういうのを出して、しかもレジュメなんかも作って、それに従って講演なんかをしていたのですが、そうなると本当につまらない。聴いてくださる方も眠っている方がチラホラ・・。そこである時から、やはりこれは自分に向いていないと、ヤメにしました。

とはいえ何も出さないわけにはいかないので、かなりきっちりしたものを一応出し、主催者の方の顔は立て、そしてきっちりで安心させておいて、本番はそれを無視して(というか本番のころには完全に忘れている)やります。

事前準備はむろんします。だいたい演題というのが決まっているので、それを見て「こんなことを話そう」とか「こんなことをやろう」とかいうアイディアを、ひとつひとつポストイットに書いて、それをペタペタと情報カードに貼っていきます。

ここで「これを最初に話して、次にこれを」なんて、ちゃんと並べないことが大事です。適当に貼ります。

この作業も会場に向かう電車の中でやることがほとんどです。その方が霊感(!)が沸きます。

で、講演が始まると、最初の方に問いをいくつか聴いている方に投げかけます。これは1,000人くらいの会場でもやります。その応えによって、どんな風に話していくか、どのようなことを中心に話していくかが自然に決まってきます。

あ、ここで「応えがこういうのが多いから、こういう順番で話していこう」と「頭」で考えちゃダメです。こういうときに頭はすでにアガっているので、頭に任せると大体失敗します。自然に任せるというか、お腹とか脊髄とか、頭以外の感じに任せた方が(少なくとも僕は)うまくいきます。

あとは能の構成法である「序破急」になるように時計を気にしながら、話を組み立てていきます。むろん反応によって途中でも、どんどん変えていきます。もうほとんどジャズのセッションのようなつもりです。

この「序破急」のすごさはちょっとびっくりですが、この話はまた長くなるので、またいつか・・。

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話す内容を事前にちゃんと決めていってうまくいくのは、講演者がとっても有名な人の場合だけじゃないかな。とっても有名な人だと、聴衆は最初から「聴こう」と思っている。講演というよりもパンダを見にいくようなものなので、何をしても大丈夫。

それが僕のように有名じゃなく、かつ聴衆が200人とか1,000人とかになったりすると、聴いている方は「自分は大勢のひとりだ」と安心しているので、もう最初から「寝よう」と思ってくる。そこまででなくても「面白かったら聴いてやる」くらいのつもり。

だから、ちょっとでもスキを与えると眠られてしまう。むろん序破急の「破」の部分では眠さも大切なのですが、前述の通りそれはまた別の機会に。

というわけで絶対に作らないのはパワーポイントです。聴衆としての自分の経験からでも、パワーポイントを使った講演で、心から面白いと思ったのはひとつもない。まず、ちょっと暗くなるのでそれだけで眠くなります。しかも事前に書かれているものなのでライブ感がない。それとパワポがやけにひどい出来だったり、あるいは逆にやけに凝っていたりすると、これまたダメです。パワポに使われている感じ。

とはいえ、以前に3DCGの本なんかを書いたこともあり、CGをいじるのは好きなので、こういうのを作るのはどっちかというと好きです。だから友人のパワポ資料作成を手伝ったり、代わりに作ったりもしている(CGアニメを入れたりね)のですが、自分では絶対使いません。

友人に聞けば、パワポ資料を作って、それを印刷して配布する、というのが条件の講演もあるみたいで、そういう講演を引き受けたら大変ですね。

僕は絶対受けません!

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講演にしろ、授業にしろ、自分の知っていることを話すだけでは意味がないと思っています。自分ひとりっていうのは絶対たいしたことないでしょ。これはどんなにすごい人でもね。で、そこにはせっかくたくさんの人がいるわけですから、その人たちは自分と同じくらいにはすごい。だから、それだけ人が集まれば、そこで何か新しいことは生み出されるはずです。むろん、ひとりひとりの心の中で生まれているものもあって、それは見えないわけですが・・。でも、同様に自分の中にも何かが生まれているはず。

事前に決めたり、パワポを作ったりしたりということは、そういうことは起きないという前提になってしまう。それなら本を読んでもらった方がいい。

自分も会場にもポストイットとかメモとかを持っていって、途中で思いついたことはバシバシ、メモしてしまいます。で、それを元に話がぐわっと変わったりもします。

さて、土曜も面白いことを思いつきました。

・・が、それをここに書けるようになるには、まだまだ時間がかかります。

 安田