こんにちは。能の安田です。
▼見えないものを見る力
日本には、なぜ「語り芸」が多いのか。
…なんてことを、このごろ浪曲の玉川奈々福さんといろいろ話しています。
世界にも「語り芸」はないことはないのですが、しかし日本ほど質量ともに充実して
いる国はありません。
それは、日本人は「見えないものを見る」能力に優れた「民族」であるということも、
その一因なのではないでしょうか。
算盤の暗算を習ったことのある子どもならば、空中に幻の算盤を出現させ、その幻の
算盤を使って高度な計算をしてしまう。そんなことをやすやすとする子どもたちの姿
を外国人が見たら、もうニンジャどころの話ではありません。超能力者です。
…とはいえ僕は、それが「遺伝的」な日本民族というものに由来するものであるとは
思っていません。日本という「風土」や、日本の「暮らし」の中に、そのような能力
を育む種がさまざま蒔かれているからだと思うのです。
ですから、そのような風土や暮らしが急速になくなろうとする現代、日本人のそのよ
うな能力も急激に衰退してしまうのではないかという危惧もあります。
▼風景に感情を見る
僕たち日本人の特殊能力は、見えないものを見る、だけではありません。風景に感情
を見るという力もあります。
「情緒」という言葉があります。
日本人は、風景の中に「感情」の「緒(糸口)」を見つけることができます。たとえ
ば唱歌『朧月夜』などは、そこには一切の感情表現がないにも関わらず、風景から感
情が湧き出してきます(特に二番、すごいです)。
http://bit.ly/1hFg2b9
このような感情表現を一切使わない詩歌というのも世界では稀です。しかし、日本で
は、俳句や短歌の多くが、感情表現を意識的に排除します。ただ「情緒(感情が出て
くる糸口)」としての風景をそこに提示することだけによって、各人に沸きあがって
くる感情にあとはゆだねる。それが日本の詩歌です。
▼そして道行
「情緒(感情が出てくる糸口)」としての風景や自然、これを圧縮したのが「枕詞」
であり、それが土地と結びついたものが「歌枕」です。
その「歌枕」を謡い継いで行きながら旅をする。そのような謡いものの形式を「道行
(みちゆき)」といいます。
結婚式などでかつてはよく謡われた能『高砂』の「高砂や〜」は「高砂」→「淡路」
→「鳴尾」と謡い継ぎつつ「住吉」までの旅をします。浄瑠璃には心中の道行があり、
浪曲にも「旅行けば〜」などに代表されるさまざまな道行があります。
この「道行」も日本の「語り芸」の特徴のひとつです。このことについては、今度ゆ
っくり書きますね。
▼「のう、じょぎ、ろう」
さて、こんな語り芸をいろいろな角度から眺めていこうと、玉川奈々福さんと考えて
いるのですが、その第一回目の企画として編まれたのが7月3日(木)の「のう、じ
ょぎ、ろう」の公演です。
これは日本の語り芸の代表である「能」、「義太夫(女義太夫)」、「浪曲」の演者
が一堂に会し、その語りをまとめて聴いていただこうという会です。中世(室町時代)
の「能」、近世(江戸時代)の「義太夫」、そして近代(明治時代)の「浪曲」と語
り芸の変遷も知ることができます。
芸を披露したあとには座談会もします。
このような催しは時々ありますが、演者自らが企画・主催するものはまれです。
ぜひ、ご参加を〜!
※なお、ミシマ社さんの「みんなのミシマガジン」でも「語り芸」についての連載を
始める予定です。お楽しみに。
あ、寺子屋もお忘れなく!今度の月曜日(って明後日)です。
●寺子屋
6月30日(月)
19:00〜
【会場】東江寺(東京都渋谷区広尾)★受講料はお賽銭です。
この回は、通常の寺子屋をします。
『論語』などを読みながら、わいわいとお話をしたり、話し合いをしていただいたり
…そんな寺子屋です。今回は、いつも途中で終わってしまっている…
「リニアな文章と論理が生まれた日」
…について、金文の『大盂鼎』を読みながらやっていこうと思っています。
あ、ちなみにこれ、前回の甲骨文の講座でもお話をしましたので、それに出ていた方
は、もう一度、聞いていただく形になります。ちょっと違う資料も用意しますが、ど
うぞご寛恕を。
飛び入りも歓迎ですが、参加がお決まりの方は info@watowa.net へお願いします。
どうぞお出ましください。
※なお寺子屋に関しての東江寺さんへのお問い合わせはご遠慮ください。
●のう、じょぎ、ろう!7月3日(木)@木馬亭19:00〜
木戸銭:予約3000円 当日3500円 tamamiho55@yahoo.co.jp
どうも私たち日本人は見えないものを見る力に優れているのではないか、なんて話を
寺子屋でもよくしています。
神が見えた祖先たち。現代でも空中に算盤を出現させて暗算する子どもたち。そして
共感覚に溢れる和歌。
それが日本に語り芸がやけに多い理由かもなんて、このごろ玉川奈々福さんとよく話
をしていて、これからそんな語り芸の秘密を探っていこうなどと思っています。
そして、その企画の第一弾がこの「のう、じょぎ、ろう」なのです。日本の語り芸の
中から「能」「女義太夫」「浪曲」の語りを一挙に聴いてみようという会です。
ひとつ30分くらいずつ語り、終わってから語り芸についてわいわいとお話をする座談
もあります。
御予約は玉川奈々福さんへ:tamamiho55@yahoo.co.jp
詳細も奈々福さんのぺーじへ。
http://tamamiho55.seesaa.net/
出演:能 安田登+槻宅聡「隅田川」(語り)夏目漱石「夢十夜(第三夜)」
女義太夫 竹本越孝+鶴澤寛也「伽羅先代萩 政岡忠義の段」
浪曲 玉川奈々福+沢村豊子「寛永三馬術」より「大井川乗り切り」
座談会「のう、じょぎ、ろう!の心意気」
●最新情報はツイッターからお願いします
http://twitter.com/eutonie(安田登)
http://twilog.org/eutonie(安田の書いた分だけ読めます)
※このメールは、以前のメーリングリスト(以下ML)にご登録いただいた方と天籟能
の本番、ワークショップにお出ましいただいた方に送らせていただいております。以
降、このメールが不要な場合はお知らせいただければと存じます。
以前のMLは、ある事情により停止しており、寺子屋等のお知らせはTwitterのみでし
たが、Twitterだけだと見逃してしまうというご意見をいただき再開いたしました。
安田登拝
▼見えないものを見る力
日本には、なぜ「語り芸」が多いのか。
…なんてことを、このごろ浪曲の玉川奈々福さんといろいろ話しています。
世界にも「語り芸」はないことはないのですが、しかし日本ほど質量ともに充実して
いる国はありません。
それは、日本人は「見えないものを見る」能力に優れた「民族」であるということも、
その一因なのではないでしょうか。
算盤の暗算を習ったことのある子どもならば、空中に幻の算盤を出現させ、その幻の
算盤を使って高度な計算をしてしまう。そんなことをやすやすとする子どもたちの姿
を外国人が見たら、もうニンジャどころの話ではありません。超能力者です。
…とはいえ僕は、それが「遺伝的」な日本民族というものに由来するものであるとは
思っていません。日本という「風土」や、日本の「暮らし」の中に、そのような能力
を育む種がさまざま蒔かれているからだと思うのです。
ですから、そのような風土や暮らしが急速になくなろうとする現代、日本人のそのよ
うな能力も急激に衰退してしまうのではないかという危惧もあります。
▼風景に感情を見る
僕たち日本人の特殊能力は、見えないものを見る、だけではありません。風景に感情
を見るという力もあります。
「情緒」という言葉があります。
日本人は、風景の中に「感情」の「緒(糸口)」を見つけることができます。たとえ
ば唱歌『朧月夜』などは、そこには一切の感情表現がないにも関わらず、風景から感
情が湧き出してきます(特に二番、すごいです)。
http://bit.ly/1hFg2b9
このような感情表現を一切使わない詩歌というのも世界では稀です。しかし、日本で
は、俳句や短歌の多くが、感情表現を意識的に排除します。ただ「情緒(感情が出て
くる糸口)」としての風景をそこに提示することだけによって、各人に沸きあがって
くる感情にあとはゆだねる。それが日本の詩歌です。
▼そして道行
「情緒(感情が出てくる糸口)」としての風景や自然、これを圧縮したのが「枕詞」
であり、それが土地と結びついたものが「歌枕」です。
その「歌枕」を謡い継いで行きながら旅をする。そのような謡いものの形式を「道行
(みちゆき)」といいます。
結婚式などでかつてはよく謡われた能『高砂』の「高砂や〜」は「高砂」→「淡路」
→「鳴尾」と謡い継ぎつつ「住吉」までの旅をします。浄瑠璃には心中の道行があり、
浪曲にも「旅行けば〜」などに代表されるさまざまな道行があります。
この「道行」も日本の「語り芸」の特徴のひとつです。このことについては、今度ゆ
っくり書きますね。
▼「のう、じょぎ、ろう」
さて、こんな語り芸をいろいろな角度から眺めていこうと、玉川奈々福さんと考えて
いるのですが、その第一回目の企画として編まれたのが7月3日(木)の「のう、じ
ょぎ、ろう」の公演です。
これは日本の語り芸の代表である「能」、「義太夫(女義太夫)」、「浪曲」の演者
が一堂に会し、その語りをまとめて聴いていただこうという会です。中世(室町時代)
の「能」、近世(江戸時代)の「義太夫」、そして近代(明治時代)の「浪曲」と語
り芸の変遷も知ることができます。
芸を披露したあとには座談会もします。
このような催しは時々ありますが、演者自らが企画・主催するものはまれです。
ぜひ、ご参加を〜!
※なお、ミシマ社さんの「みんなのミシマガジン」でも「語り芸」についての連載を
始める予定です。お楽しみに。
あ、寺子屋もお忘れなく!今度の月曜日(って明後日)です。
●寺子屋
6月30日(月)
19:00〜
【会場】東江寺(東京都渋谷区広尾)★受講料はお賽銭です。
この回は、通常の寺子屋をします。
『論語』などを読みながら、わいわいとお話をしたり、話し合いをしていただいたり
…そんな寺子屋です。今回は、いつも途中で終わってしまっている…
「リニアな文章と論理が生まれた日」
…について、金文の『大盂鼎』を読みながらやっていこうと思っています。
あ、ちなみにこれ、前回の甲骨文の講座でもお話をしましたので、それに出ていた方
は、もう一度、聞いていただく形になります。ちょっと違う資料も用意しますが、ど
うぞご寛恕を。
飛び入りも歓迎ですが、参加がお決まりの方は info@watowa.net へお願いします。
どうぞお出ましください。
※なお寺子屋に関しての東江寺さんへのお問い合わせはご遠慮ください。
●のう、じょぎ、ろう!7月3日(木)@木馬亭19:00〜
木戸銭:予約3000円 当日3500円 tamamiho55@yahoo.co.jp
どうも私たち日本人は見えないものを見る力に優れているのではないか、なんて話を
寺子屋でもよくしています。
神が見えた祖先たち。現代でも空中に算盤を出現させて暗算する子どもたち。そして
共感覚に溢れる和歌。
それが日本に語り芸がやけに多い理由かもなんて、このごろ玉川奈々福さんとよく話
をしていて、これからそんな語り芸の秘密を探っていこうなどと思っています。
そして、その企画の第一弾がこの「のう、じょぎ、ろう」なのです。日本の語り芸の
中から「能」「女義太夫」「浪曲」の語りを一挙に聴いてみようという会です。
ひとつ30分くらいずつ語り、終わってから語り芸についてわいわいとお話をする座談
もあります。
御予約は玉川奈々福さんへ:tamamiho55@yahoo.co.jp
詳細も奈々福さんのぺーじへ。
http://tamamiho55.seesaa.net/
出演:能 安田登+槻宅聡「隅田川」(語り)夏目漱石「夢十夜(第三夜)」
女義太夫 竹本越孝+鶴澤寛也「伽羅先代萩 政岡忠義の段」
浪曲 玉川奈々福+沢村豊子「寛永三馬術」より「大井川乗り切り」
座談会「のう、じょぎ、ろう!の心意気」
●最新情報はツイッターからお願いします
http://twitter.com/eutonie(安田登)
http://twilog.org/eutonie(安田の書いた分だけ読めます)
※このメールは、以前のメーリングリスト(以下ML)にご登録いただいた方と天籟能
の本番、ワークショップにお出ましいただいた方に送らせていただいております。以
降、このメールが不要な場合はお知らせいただければと存じます。
以前のMLは、ある事情により停止しており、寺子屋等のお知らせはTwitterのみでし
たが、Twitterだけだと見逃してしまうというご意見をいただき再開いたしました。
安田登拝